安井 勇 さん (37歳)
業務内容●工場の生産自働化
大学時代に学んだこと●機械工学・クルマの操作感の向上について
トヨタ自動車入社理由●事故を起こさない安全なクルマをつくりたい
ひと言●名古屋生まれ名古屋育ち、音楽好き、MBA取得中。
team FUNVE トークショー 05ARカートのしくみ大解剖―その3―
コースを外れても大丈夫、位置情報を使った安全・安心設計
- 普段どんな業務をされているのでしょうか。
-
安井:工場の生産自働化です。もともと事故を起こさないクルマをつくりたいと思ってトヨタ自動車に入社したので、少々違うところにいると思われがちですが、実は工場の自働化というのは、クルマの自動化とそんなに離れてないように思います。工場は大変な作業が多くて、例えば指先をつかって組み立てたり、一日中同じ作業を繰り返しています。これを自働化で楽にするわけですが、クルマも歩くという移動を楽にするというところで共通点を感じています。
- 具体的にどのようにするのでしょうか。
-
安井:最近はロボットで自働化することが増えてきています。作業内容に応じて、人型のようなロボットや、人の腕のような形、最近だと自動運転の技術を応用して、物を自動で運ぶタイプも登場しています。ロボットを導入する際に思うのは、人が何気なく行っている作業をロボットがこなそうとするととても難しい。人ってやっぱりすごいなと感じますね。
- 安井さんはFUNVEの開発で主にどこを担当されたのですか?
-
安井:ARです。ARとは現実の世界にバーチャルを重ね合わせるという技術になります。それを実現しているのがHololens2というグラス型のコンピュータです。この中には自分の位置や方向を知るセンサーと、AR空間の形を把握するセンサーが入っています。これらを組み合わせることで、カートが今どこにいるのかが分かります。コースから外れかかると速度を遅くし、完全に外れると止まるという安全・安心な仕組みになっています。
開発期間は3カ月、カートもゲームもすべてオリジナル
-
安井:ARのキャラクターも我々がオリジナルで考えました。といっても、みんなデザインについては素人。なので社内のデザイン部に少し教えてもらいまして。そもそもプログラミング自体、私はやったことがなくて、入門向けの教材を買うところから始めました。カートを含めてすべて完成させるまで3カ月しかなかったこともあり、大変でした。
- やったことがないのに3か月で完成させるなんんて凄いですね!
-
安井:いやいや、何度も壁にぶつかりました。チームのメンバーに相談して解決しようにも、みんな未経験者だから、らちが明きません。なのでネットを通して同様のプラットフォームを使うエンジニアたちに教えてもらったりしました。こうして、なんとかゲーム開発を軌道に乗せていくわけですが、一番苦労したのが、カートが動くとゲームの画面がズレてしまうところです。Hololens2って通常、静止した状態で使うもので、カートで動きながらの使用を想定してないんです。この問題を解決するには、移動速度とプログラムの微調整をひたすら繰り返すしかありませんでした。
今回はゲームをつくりましたが、交通安全のコースだったり、またプログラミング教室だったり、いろんな可能性がまだまだあるんじゃないかなと思います。最近はお絵描きカートといって、クルマで走った軌跡で絵を書くというゲームを考えています。自在な動きができるので、いろんな絵が描けて、空間把握能力が鍛えられるんじゃないかと。こういう遊び方もできるんじゃないかと思います。
- 会場の皆さんはどんな絵が描きたいですか
-
(保護者):自分で走るコースの絵を描いてみたいですね。
- では、どこで体験できるとうれしいでしょうか。
-
(保護者):病院、とか。長期入院していたり、普段運転ができない人が多いところ。
-
安井:なるほど! 我々では思いつかなかった意見です。大変参考になりました。ぜひ実現したいですね。場所の話をしましたが、これまでにも販売店さんや小学校などで体験会を開いてきました。今後もさまざまな場所で活動していきますので、引き続きご期待いただければと思います。
- 今後も活躍を期待しています。
「team FUNVE」は、トヨタ技術会(※)のメンバーで構成されたチーム。「Fun to Drive for kids」をモットーにしており、子どもから大人まで楽しめるARカート「FUNVE」を開発した。専用のゴーグルをかけることで見えるゲーム画面と、実際に操作するカートを連動させており、リアルとバーチャルの融合というこれまでにないARカートを実現。現在も遊びながら交通ルールを学べるゲームの開発にチャレンジするなどの取り組みを続けている。
※トヨタ技術会とは
1947年に発足した、トヨタ自動車社員の有志団体。プログラミングやAIなどの技術向上を図り、様々な事業の発展に寄与することを目的としている。
ご参加くださいました皆様、ありがとうございました。
取材へのご協力もありがとうございました。
また開催いたしますので、ぜひ「WEB TOYOTOWN まちいち・みえのまち」にお寄りください。