林 二郎 さん (36歳)
業務内容●電気自動車のモーター開発業務
大学時代に学んだこと●機械設計・燃料電池の研究
トヨタ自動車入社理由●燃料電池とクルマの開発を通じて地球温暖化防止に貢献したい
ひと言●趣味はスノーボードや、3Dプリンタを使ったDIYです
team FUNVE トークショー 04ARカートのしくみ大解剖―その2―
リアルとバーチャルを融合した新しいモビリティ
- まず普段のお仕事についてお聞かせください。
-
林:ハイブリッド車や電気自動車で使うモーターの開発をしています。モーターというのは、昔からあるガソリン車のエンジンにあたる部分で、電気で動きます。構造はエンジンと比べるとシンプルですが、意外と奥深い部品です。今後電動車が増える中で重要な部品ですので、やりがいを持って楽しく仕事しています。今回のFUNVE(ファンビー)もモーターで動きます。
- そのFUNVEについて教えてください。
-
林:FUNVEは、リアルとバーチャルを融合した新しいモビリティです。リアルはカート。バーチャルはARグラスに映し出される映像。ゲームの世界に入り込み、子どもでも存分に運転が楽しめるようになっています。
- テーマパークにあるようなライドアトラクションみたいですね。
-
林:そうですね。遊園地のアトラクション感覚で楽しんでもらえると、私たちもうれしいです。ただ、FUNVEはあくまでカートが主体。自動車メーカーらしく、運転の楽しさや可能性を追求しています。もともと子どもたちの笑顔を広げていこうという目的があって、2020年にこのプロジェクトを立ち上げて、皆さんの笑顔を推進力にここまで進んできました。
- カートは見るからにメカメカしていて、部品がいっぱいであることが伺えます。形にするまでどれくらいかかりましたか。
-
林:10人くらいで毎日集まり、2週間ほどかかりました。その前に部品を準備するのに1カ月ほどかかっています。あとはチューニングといって、カートが組みあがってからも、行きたい方向に行けるよう制御するのに1カ月かかっています。子どもが乗って、怖さを感じない程度の速度に調整することにも注意しました。
走りは縦横無尽! これからもっと広がるFUNVEの世界
- FUNVEの特徴を教えてください。
-
林:前、後ろ、真横、斜め、さらにはその場でくるくる回ったりと、縦横無尽に走れるところです。それを実現しているのがこのタイヤ。メカナムホイールと言います。一般にはあまり見ないタイヤですが、物流の倉庫などで使われています。これを子ども向けのゲームで使ってみようという発想は...私たちが初めてかも(笑)。それともうひとつ、ゲームの映像に合わせて動くシートも特徴です。例えばゲームの空間でデコボコ道を走るとシートが振動し、本当にデコボコ道を走っている感覚が味わえます。
- ゲームの映像はARグラスに映し出されるんですよね。
-
林:そうです。サングラスみたいにうっすら透明になっていて、ゲーム映像は実際の景色に重なるように映し出されます。マイクロソフトさんのHoloLens2というARグラスを使っています。プログラミング次第でゲームが無限大につくれるというところと、インターネットを使ってオンラインで遠く離れていても複数人でプレイできるというところが特徴です。今回、2つのゲームをつくりました。1つは悪者ハンターから動物を保護するアニマルレンジャー。ゲームフィールドにランダムに出現する動物をつかまえて遊ぶゲームです。2つのジョイスティックで操作します。もうひとつはレースゲームのワールドレーサー。こちらはステアリングとブレーキで操作します。1周走るごとにコースの世界観が変わって、たとえば雪道コースではコーナリング時に横滑りするような挙動に変化します。
現状はアニマルレンジャーとワールドレーサーの2種類ですが、これからもっといろんなことに挑戦したいと考えています。トヨタがJAXAと共同研究している月面探査機ルナクルーザーの仮想体験とか、かぼちゃの馬車でプリンセスの世界観の体験など、子どもに楽しんでもらえるコンテンツを考えていきたいです。また、交通安全教室にも活用できないかと考えています。子ども向けの交通安全教室といえば歩行者としての教育になっていますが、運転者からはどう見えているのかの実感は多分ない。例えばボールが転がってきたときクルマは急に停まれないことを、カートを実際のクルマに見立てて、ARで仮想体験してみるのも手だと思います。
- 遊びながら安全に学んでくれたら、という思いが伝わってきます。
-
林:最後に、我々チームFUNVEは2021年から社外に向けて活動しています。ラグーナテンボスさんや小学校など、いろいろなところでARカートを体験していただいています。今後見かけることがあったら、また乗っていただけるとうれしいです。
「team FUNVE」は、トヨタ技術会(※)のメンバーで構成されたチーム。「Fun to Drive for kids」をモットーにしており、子どもから大人まで楽しめるARカート「FUNVE」を開発した。専用のゴーグルをかけることで見えるゲーム画面と、実際に操作するカートを連動させており、リアルとバーチャルの融合というこれまでにないARカートを実現。現在も遊びながら交通ルールを学べるゲームの開発にチャレンジするなどの取り組みを続けている。
※トヨタ技術会とは
1947年に発足した、トヨタ自動車社員の有志団体。プログラミングやAIなどの技術向上を図り、様々な事業の発展に寄与することを目的としている。
ご参加くださいました皆様、ありがとうございました。
取材へのご協力もありがとうございました。
また開催いたしますので、ぜひ「WEB TOYOTOWN まちいち・みえのまち」にお寄りください。