上田 貴康 さん (35歳)
業務内容●廃棄ゼロのしくみづくり・技術開発、材料開発
大学時代にに学んだこと●クルマを軽くする金属材料
トヨタ自動車入社理由●世の中をよくする技術を世界中に発信するため
ひと言●三重県松阪市出身です。体を鍛えるのが趣味です
team FUNVE トークショー 02いのちを守るじょうぶな材料
金属のポテンシャルを引き出し、より環境に優しいクルマへ
- 上田さんはなぜトヨタ自動車に入社しようと思ったのですか?
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上田:材料のチカラでクルマをもっと環境にいいものにしたいと思ってトヨタに入りました。そしてこれまで安全かつ燃費のいいクルマをつくるため、丈夫で軽いクルマの骨組みを開発しています。将来的にはゴミを出さない環境にいいクルマを実現したいと思っています。
- なぜ金属に惹かれたんですか?
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上田:金属って面白いんです。同じ鉄でもつくり方を工夫すると柔らかくしたり硬くしたりできて。さらに、昔から使われている材料なのにまだまだわからないことだらけなんです。極めるといろいろな製品の性能を根本から良くできるという金属のポテンシャルに惹かれました。
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上田:早速、みなさんにお聞きしたいのですけどクルマってどんな材料でできていますか?
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(小人):金属!あとガラスとかプラスチック
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上田:ありがとうございます、正解です。一番多く使われているのは金属、特に鉄なんです。鉄といえばどんなイメージがありますか?
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(小人):硬い!力に強い!
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上田:素晴らしいですね。是非トヨタに入ってください(笑)。ではこれから丈夫かつ軽い鉄についてお話したいと思います。まず我々が安心安全についてどう取り組んでるのかを説明します。衝突の際に、うまくショックを吸収しながら乗員を守るため、あえて潰す部分と、潰さずに空間を守る部分を設けています。潰す部分には柔らかい鉄を、みなさんが乗る部分には硬い鉄を使っています。
- 前と後ろは柔らかい素材で、内側は硬い素材で守られているんですね。
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上田:では、硬い鉄と柔らかい鉄、どうやって違いが出るのか。主に3つ方法があって、1つはどういうものを鉄に混ぜるか。専門用語で合金元素と言います。次に加工の仕方。そして最後が熱の与え方。温めて急に冷やすと硬くなります。鍛冶屋さんが熱い鉄をカンカン叩いて冷やして仕上げる、まさにあのイメージです。これら3つを工夫して鉄の硬さを調節します。実際つくるのはトヨタ自動車でなくて材料メーカーさんなので、協力して一緒にやっています。
- いろいろな工夫で鉄の特徴を変えられるんですね。でも、それだけでは鉄と軽いは結びつかないような…
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上田:はい、では次に「どうやって鉄でクルマを軽くするか」です。どうやったら軽くなると思いますか?
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(小人):アルミを使う!
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上田:それはある意味正解です。金属の中でもアルミは軽い。鉄に比べると少し高価ですが、一部のクルマで使っています。
- お母さんにも聞いてみましょう。
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(保護者):薄くする。
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上田:御名答。これは答えの一つです。主に2つ方法があります。部品を強くするために補強材を入れている場合があります。もっと強い鉄になれば補強材がいらなくなって20%〜30%ほど軽くできます。もう1つは先ほど答えていただいたように、もっと強い鉄を使って薄くする。でも、強い鉄をつくるといってもなかなか難しいんですね。鉄を強くすることができたとしても、部品の形にプレスしたときに割れてしまうなど課題があるんですよ。それは材料メーカーさんだけじゃどうにもならない。なのでトヨタ自動車の材料開発と生産技術を活かしながら、設計者に割れにくい形にしてもらうというふうに、チーム一丸になってやってます。
- たくさんの苦労をしているんですね。
これからの材料技術
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上田:安心で軽いというのは重要ですが、資源にも限りがあるのでこれからはゴミにならない材料も大事です。クルマをスクラップにしても、再利用できるような仕組みづくりも行っています。
- お客様なにか質問はありますか?今日お話した内容が将来的に形になって世に出るかもしれませんよ。
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上田:EVや水素自動車も本気でやります。トヨタイムズで章男社長が言ってますよね。そうするとエンジンをつくっていた人たちは知識を活かせるので水素エンジンを作ったりとか、あと自動運転に力を入れているとこがありまして、どうやってクルマを制御したら自動運転できるだろうとか、どんなセンサーをつけたらぶつからず避けるだろうとか。そういうことをやる分野に人をつけてます。
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(保護者):EVや水素自動車などクルマが変わっていく中で、材料の変化ってあるんですか?
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上田:大きく変わるとすれば、EVや水素自動車というのもそうですが「ぶつからないクルマ」ができた時だと思います。ぶつかる前提だとさっきみたいなクルマの構造になるのですが、いずれぶつからないようなクルマができるとより軽い材料に変わっていきますね。
- 他に質問とかありますか?ご要望等でも構いません!
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(保護者):運転中、ピラーに対向車が重なって見えにくいです。改善できませんか?
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上田:ありがとうございます。ピラーは衝突時の安全を考えると必要です。ただ、視界が広くなるように、細くする、外の映像を投影して見えるようにする、などの検討は他社も含めてなされています。
- 技術の進歩でまだまだ改良できる点がたくさんですね。
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上田:みなさん、クルマの材料について意識されることってあまりなかったと思いますが、私たちがこだわりを持って日々開発していることを知って、興味を持っていただけたら嬉しいです。そして優秀なお子さんたちが将来クルマをもっと良くする優秀なエンジニアになってくれたら頼もしいなと思います。
「team FUNVE」は、トヨタ技術会(※)のメンバーで構成されたチーム。「Fun to Drive for kids」をモットーにしており、子どもから大人まで楽しめるARカート「FUNVE」を開発した。専用のゴーグルをかけることで見えるゲーム画面と、実際に操作するカートを連動させており、リアルとバーチャルの融合というこれまでにないARカートを実現。現在も遊びながら交通ルールを学べるゲームの開発にチャレンジするなどの取り組みを続けている。
※トヨタ技術会とは
1947年に発足した、トヨタ自動車社員の有志団体。プログラミングやAIなどの技術向上を図り、様々な事業の発展に寄与することを目的としている。
ご参加くださいました皆様、ありがとうございました。
取材へのご協力もありがとうございました。
また開催いたしますので、ぜひ「WEB TOYOTOWN まちいち・みえのまち」にお寄りください。